論文つづり かた”手鏡”

研究論文を作るときに照らし合わせて”手鏡”とすべ項目をまとめました 
updated 2015.2.20 Das Leiden ist menshlich.  KLab

■研究論文”雛形”: 科学技術のため論文作成方法および論文の雛形 


目 次

作権や新奇性(オリジナリティ)に関する注意
本文を書き出す前に”題目”を決め”要旨”を書こう
論文のための文章作成上の要点
図や表の掲載方法
文献の引用についての要点
結論を読み返そう

著作権や新奇性(オリジナリティ)に関する注意

 論文は,教科書とは異なり過去の知識をまとめたものではない.必ず何か新しい視点,手法,結論を記述すること.過去の誰かの結果を引用してもよいが,これは新しい何かを理解してもらうために行う.自分が作った文章・図・表以外は必ず誰かのものである.引用する際は必ず誰が何処に発表した物なのかを明らかにすること. 有りがちだがやってはいけないことをまとめると次のようになる.

※ 先輩の論文を拝借するなど噴飯ものだ!  
どの先輩も汗と涙を流して論文を仕上げています.研究室にある論文は是非参考にして下さい.しかし ちゃっかり頂いたものは天誅が下ります.
※ 英文などを翻訳しても自分の文章とはならない.   
英文をそのまま翻訳して書き込む場合は,引用符号「」をつけて必ず参考文献に記入すること.
※図をインターネットから入手してそのまま貼り付けるなど言語道断!  
図や表などは必ず自分で作成すること.インターネットから入手してそのまま貼り付けるなど言語道断!
※インターネット上の情報より出版物(学術誌・著作)を調べよ  
インターネット情報は2次資料あるいは3次資料とよばれ,結論を導くための資料が欠落していたり, 誰かが言っていた未確認情報だったりします. 直接的に事物を確かめ得る資料,即ち,1次情報を得ることが論文を書くためには必須です. インターネット情報の多くは,出版データを明らかにはしていない.図書館などの検索システムを活用して出版情報を入手すること. 例えば,次の検索システムが役にたちます:    
  CiNii         国立情報研究所が公開している検索システム 日本語と英語を検索可能    
  Google SCHOLAR  Googleのアカデミック情報検索システム 英文だが強力
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本文を書き出す前に”題目”を決め”要旨”を書こう

 まずは,何に関する論文かを明確にするために題目を決める.題目は1行程度の簡潔なもので,何をしたかを明確に示すものがよい.科学技術論文の場合,「実験結果の検討」,「現象の解析手法の提案」,「システムの最適設計」などについて記載することが典型である.良くない例として,「フィルターの計測結果に関する一考察」が挙げられる.この場合,考察により何が得られたか不明であるので,考察する現象を明確にして「フィルターの周波数依存に現れるモード変換効果の解析」などとした方がよい.

 題目が決まっても本文にはまだ早い.論文の本文をいきなり書き出すより,1ページ程度要旨(概要)をまとめるとよい.このとき,概要には

図や表を用いず,全てを言葉で表現する
とよい.文章全体で使用する用語や全体の構成などを決定することができ,統一感をもたせて本文を作成できるようになる. 要旨に記載すべき不可欠な項目をまとめると次の様になる..
1)研究背景と対象: 
研究の背景などを交えて対象を説明する.博覧強記な記述より,次に記述する論文の目的が十分に分かってもらえるように準備する.
2)研究目的:
何をしたいのかを明言する.
3)手法:
研究目的を達成する手段を記入.通常,目的を達成するための多くの手法がある.これらの中で,何故この方法を用いたのかを,その利点とともに記入するとよい.
4)結論:
 論文を通じて明らかになった最適な手法・最適な数値・注目すべき関係性などについてまとめる. 単に何かが出来たという記述では不十分で,新たな進展が見込まれるような記述があること.  
 研究目的を達成できなかったとしても,何が何処までが達成できたか,あるいは,今後どのように発展するかを 可能な限り具体的に記入する.
イヌイットが氷原の彼方にアザラシを狙うように,あるいは,鬱蒼とした密林で虎と対峙するように, たがえることなく照準を決めるのがこの作業なのだ.
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論文のための文章作成上の要点

 論文で最も大切な点は,得られた結論の意義と新奇性(オリジナリティ)を誰でもが理解できるように記入することである. このためには文章上の一般的な約束を守る必要がある.以下にその要点をまとめる.詳細は, ファイル kakikata.pdf参照のこと.

■ 助詞「てにをは」に関する要点

助詞の「は」を「を」と修正したほうがよい場合が多い
日本語の「は」には,対象を限定する目的格に使用される.例えば,     
 『助詞の「は」「を」と修正したほうがよい』
と表現できる.しかし,「は」は主語を表す助詞にも用いられるので,長い文章では「は」より「を」を用いた方が文意明確になる.
 
 助詞「てにをは」は文章を作成したあと,読み返して文意を検討するとこと.
■ 文(statement)に関する要点
・文には主語と述語(動詞)がある.主語は状況から判断できれば省略も可能であるが,述語は必ず必要.
・主語と述語は必ず "一致”しなければならない.
悪い例: 「門番は鍵を開け猿は通過する」
「鍵を開け猿は」を読まないなら「門番は通過する」と誤解される.また,この文章では前半と後半が何の関係があって並んでいるか分からない.
修正例: 「門番は鍵を開き,猿を通過させる」 前半および後半とも主語は門番である.
・主語を1つだけにすること.1つの文章に2つ以上主語があると”誰が何をしているか”が不明確となる.
悪い例:「門番が鍵を開いたとき,猿が通過する」 
 文章としては正しいが「門番」「猿」と主語が2つあるので長い文章では意味を把握しずらくなる(ただし,この程度の長さなら普通は誤解はない).
修正例:「門番は鍵を開き,猿を通過させてしまった」
・同じ "もの" は,同一の名詞を用いる.
詩などの韻文と異なり,ボキャブラリー(語彙)を増やすと正確さが失われてしまう.例えば,ニューラルネットと神経回路網は同じものを示すが2つを使い分ける理由が無ければ,ひとつの用語に絞る.
■ 段落(paragraph)に関する要点
・各段落には”要石(かなめいし)”となる1文を鎮座させる.  
説明したい事象を,一言で表現する文章があることで,段落の意図が明らかになる.その他の文章はこれを理解するために必要な背景などの説明とする.
・各段落の分量はバランスを保つこと.
極端に長いあるいは短い段落は,全体の文章のトーンを変えるので統一すること.
■ 文節と章(section and chapter)に関する要点
・起承転結を!   
一般的に科学技術の文献は,研究の「背景・目的・手法・結果と考察・結論」をのべるものである.これらの内容がはっきり分かるように文節および章の分割を行う.
・本筋以外は付録とする.
論文は全体で1つの主題をのべる.2つ以上の主題がある場合は,いずれか一方だけにする.どうしても載せたい副主題は第二部に記述する.あるいは付録にする.また,設計図や計算プログラムの詳細など細かく分量もかさむものも付録にする.
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図や表の掲載方法

 図や表を効果的に使うと,考え方を分かりやすく説明することができる.また,何よりも論文の結果を直接的に示すことができる. 一般的に,図や票は文脈から独立した”実体”とみなし,「図2.3にモデルの概要を示す」というように読者の視線を図に導いてから,その内容を説明すると分かりやすくなる.
 論文の初心者では「モデルの様子を下図に示した・・・・」という様に図を段落の中に入れるものが目立つが,不文律としてではあるが学術論文ではこのようには図の説明を行わない.必ず図に番号とキャプションを添えて,ページの端などに段落の外の実体(オブジェクト)として配置(レイアウト)する.図表の掲載に関する要点をまとめると次のようにる.

1)図や表には番と号説明文(キャプション)をつける. 例えば ,つぎのようになる:       
図3.7 キャビティの共鳴曲線
  
2)図表につける説明文(キャプション)は簡潔なものにする.
本文でも図表の説明をつけるので,キャプションは簡潔なものにする.
3)図表は独立した実体(オブジェクト)として扱う
論文の本文に図表の説明を記入する場合,図表は文(sectence)あるいは段落(paragraph)とは独立した対象とする. たとえば,次のような書き方は(ネットは兎も角として)論文には不向きな例である.

共鳴曲線を計算した結果次の図のようになった.
(ここに図を掲載する)
  ここで,横軸は強制振動させる周波数を・・・・
  
4) 図の横軸・縦軸は見やすく”大きく”バランスを考えて書くこと.同じ理由で,線も太くした方が見やすい. たとえばEXCELの作図ソフトは,詳細を確認できるように,グラフの線が細く描かれる. 論文に挿入したときや,プレゼンテーションのときにスクリーンに投影することを考えると, 市販のアプリケーションのデフォルト設定では線が細すぎることが多い. 初心者は細い線で細かな図を作成することが多い,だまされたと思って,まずは大きな字ど太い線 で図を描こう! 不要な情報を削りおされ見易い図ができるのもこの作業の功徳.

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文献の引用についての要点

何を参考文献とし引用するのか


 文献の引用は効果的に行うこと.必要のない引用は行わない.引用するなら何故引用するこかを明確に分かるように文章に記入すること. 一般的な引用の理由をリストアップすると次のようになる. 

「序論」において研究の背景を紹介する場合.
先行する研究を,公平に引用する.勉強するとその分文献が増えるが,オリジナリティを重視すること.一方,自分が参考にし多くの啓発をうけた論文なら引用するのは著者に対する礼儀である.
 
「研究手法」について自分が開発した以外の方法を用いた場合.
自分が開発した方法でない限り必ず文献を引用して説明する.既存の論文にある内容を再度載せる必要は無い.ただし,自分が付け加えた新たな観点を比較して説明するためなら再度の記述も必要である.この辺りが,解説書と論文との違いである.
「結論,考察」において過去に行われた研究を批判的に論じる場合
この場合は,文章を引用する.ただし,概念的あるいは抽象的な批判は行わない.実際にあった信じられない例として,「文献[3]において,エネルギー保存則に関する認識が欠けている」という記述がある.エネルギー保存を認識していない研究者などいるのだろうか?この場合は批判というより悪意のような記述である.具体的に批判を展開するなら「文献[3]の(5.2)式は,エネルギー保存則を展開係数に関して2次のオーダーまで考慮していない」のようにするとよい.
文献から文章,図,グラフなどを引用する場合
 図や表に変更を加えても,オリジナリティの優先権(プライオリティ)は自分のものとならない.
引用の仕方
・文献から引用した文章は,括弧「 」で括り引用したものであることを明確にする.また文献番号も必須である.
・文献番号は[4]のようにして記述する.番号は引用する順,出版年度の順,著者名の順などでつける.
・参考文献のリストアップの仕方は,
  [文献番号] 著者,「文献の題目」,出版情報
のように行う.様式は邦文か英文かによって多少ことなる.詳細は論文にある例を参照するとよい.幾つかの例をあげると次の様になる.
 
書籍 
[1] 菅野卓雄監修 飯塚哲哉編,「CMOS超LSIの設計」,倍風館 (1989年 東京)
[2] C. Mead, "Analog VLSI and Neural Systems", Addison-Wesley Publishing Company,(Reading MA, 1989)
論文 
[3] A.Benett, T. Stuwart and W. Li, "A perspective of conductivity of metaric nano-wire", Physical Review B, vol.4, no.11, pp.236-239 (1985).
学会
[4] 小堀孝哉,加藤初弘,近藤英一,秋津哲也,「10GHzを超えるクロックのキャビティによる伝達方法とその特性」, 応用物理学会第69回シリコンテクノロジー分科会, JSAP CatalogNumber:AP052207, pp.7−11,2005年1月31日,東京 機械振興会館.
[5] Y..Mochizuki, H. Shibata, M. Tsujimura and H. Hiyama., "Finite Element analysis of the stress in vias with Cu/low-k structure", in Proceding of Advanced Metallization Conference 2005. pp.100-101 (Tokyo, October 13-14, 2005).

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結論を読み返そう

 論文の最後に何か新しいい知見なのかを高らかに宣言する.これが,”結論”,”まとめ”あるいは”桔言”である.
結論では図・表は極力使用せず,箇条書きなども活用して簡潔に示す. さらに,今後の発展の余地など成果が重要であり役に立つことを添えるのもよい. 当然だが,ここに宣言できるような,新たな知見や有望な結果などがなければ論文とはならない. しかも,それは何某かでもオリジナリティ(新奇性)がなければならない.

 論文を書き終わったと思ったら,結論を読み返してみよう.本当に論文になるかな・・・・・?

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