フォトクロミック微結晶の光トラップ実験の論文がApplied Physics Lettersに掲載されました。

光で物体を空中や液中で捕らえ、固定したり移動したりする技術を光ピンセット、光トラップと呼びます。物体を光トラップすることで、精密に観察したり、物体の性質を精密に計測したりすることができます。

どの物体を光トラップするかしないかを外部からの作用で望むように切り替えたり、光トラップされている物体の内部に変化が生まれたら自動的に光トラップ中から出ていったりしたら、さらなる発展があります。

私たちは、ネール研究所(フランス グルノーブル)、龍谷大学、東京大学と共同で、光トラップされた物体に外部から光で変化を加える実験を行いました。光で色が変わるフォトクロミック結晶を光で水中で光トラップし、外部から別の光を当てて結晶を着色したり、脱色したりします。すると、着色状態では弱くトラップされていた結晶が、脱色によって強くトラップされることを発見しました。

なぜこのような変化が生じるのか、実はまだ明確には分かっていません。光トラップした物体が、フォトクロミック分子が整列した「結晶」であることが関係していると考えています。

この研究は、光トラップされている物体の動きを制御することだけでなく、動きから物体の状態を推測することにもつながります。複数の物体をトラップして、物体の状態にもとづいた計算もできるかもしれません。


(この論文はApplied Physics Lettersに掲載されました。)
“Optical trapping of photochromic microcrystals by a dual fiber tweezers”
Appl. Phys. Lett. 121, 111103 (2022); https://doi.org/10.1063/5.0101484
K. Uchiyama, J. Fick, S. Huant, K. Uchida, M. Naruse, and H. Hori
https://aip.scitation.org/doi/abs/10.1063/5.0101484?journalCode=apl